交通事故は原則として運転者の責任において解決されるものです。しかし、事故のあった自動車の同乗者であっても、時には事故の責任を負わなければならないことがあります。その典型的な例が飲酒運転です。
飲酒運転の教唆・幇助
交通事故の責任は、民法第709条以下に規定される不法行為責任です。そして、民法第719条は、不法行為者を教唆・幇助した者は共同不法行為責任を負うと定めています。
教唆とは不法行為者をそそのかして不法行為をさせることを言います。また、幇助とは不法行為者を手助けして、不法行為の達成を容易にすることを言います。
飲酒運転であれば、これから運転することを知っているのに、一緒にお酒を飲んだり飲酒を勧めた場合には飲酒運転の教唆・幇助したとして共同不法行為責任を負う可能性が高くなります。
飲酒運転の自動車に同乗しているだけで、飲酒の幇助行為が存在したとみなされることになります。これまでの裁判例では、飲酒運転の同乗者が共同不法行為責任を負うかどうかは、運転者と同乗者の関係、飲酒量の程度、同乗者がどの程度運転者の運転や飲酒に関わっているか等が総合的に考慮されます。
具体的に言えば、職場の同僚が同乗者のケースよりも先輩や上司が同乗者のケースの方が、幇助しやすい状況にありますので、責任が認められる可能性が高くなってきます。
飲酒運転教唆・幇助のその他の責任
以上の話は、交通事故被害者への損害賠償責任の話ですが、飲酒運転の教唆・幇助は刑事責任や行政上の責任も負うことになります。飲酒している者に運転するよう自動車を提供する車両提供、運転する者に酒を飲むよう勧める酒類提供、そして飲酒運転であることを知りながら同乗した場合にそれぞれ状況に応じた刑事責任が科せられます。