後遺障害による逸失利益は、障害が後から発生した場合や等級が不相当である場合に問題となります。また、身体の部位によっては特殊な逸失利益が発生する場合があります。
示談後に発生した後遺障害による逸失利益
交通事故の賠償金がいくらになるかは、被害者の怪我の状況等を考慮して決定されます。そして、一度示談で決定された損害額は覆すことができなくなります。
しかし、事故の傷害はしばらく時間が経ってから発生する場合もあり、それが示談の成立後に生じる可能性もあります。このような場合には、示談成立後でも治療費や後遺障害の逸失利益を賠償額として認めた裁判例があります。
もっとも、示談の際にはこのような後から傷害が発生する可能性を考慮しておくことが後々のトラブルを避けるためには重要です。
不相当な障害等級と逸失利益
後遺障害の等級は、あらかじめ定められた基準に基づいて自賠責損害調査事務所が判断します。こ子で認定される等級は逸失利益の算定にも大きな影響を与えます。しかし、損害調査事務所の認定が実態に合わないこともあります。
例えば、運送業のドライバーが視力の一部を失った場合を考えてみます。視力に関する後遺障害等級で最も軽いものは13等級で、「1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの」と規定されています。
半盲病とは視界の半分が見えなくなることです。つまり、視界の3分の1や4分の1の欠損では後遺障害と認定されないのです。しかし、そのような状態では運転をすることはできず、ドライバーとしての職を失うことになります。
このようなケースで、裁判所は加害者に対して慰謝料を認めた裁判例があります。
顔面醜状による逸失利益
顔面醜状については、その程度に応じた等級での後遺障害が認められています。顔面醜状の後遺障害等級は、程度に応じて7級、9級、12級の3段階が設定されていますが、被害者の職業によってはさらに大きな逸失利益が生じる場合があります。
俳優やモデルのように顔が商売道具の一部である場合はもちろんですが、顧客との交渉をすることの多いビジネスマンについても交渉力に影響するとの判断から逸失利益を認めた裁判例があります。
※以前は男女差がありましたが、平成22年の改正で統一されました。
PTSDと後遺障害等級
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、物理的な障害はないのに、事故に遭ったり目撃したことにより、その後もそのショック・恐怖を受け続ける症状を言います。PTSDについても後遺障害が認められる場合があります。
ただし、後遺障害等級は、その影響が永続的に認められる場合にのみ認定されるものですから、PTSDが永続的なものかどうかによって判断されることになります。後遺障害として認定された場合は、PTSDの程度によって9級、12級、14級の3段階があります。