代車費用の相場に関する判例

交通事故で車両が損傷すれば、修理や買い替えに必要な期間中は、自動車が手元にありませんから代車を使う必要があります。この場合利用できる代車は原則として事故に遭った車両と同等の車格のものです。しかし、代車費用が極端に高額な場合には制約が掛けられることがあるとしたのがこの判例です。

大阪地裁判決昭和62年1月29日交民20巻1号154頁

事例

AはBの過失による交通事故によって、自己が所有する高級車キャデラックが事故で損傷し、修理が必要となった。Aは修理の11日間に代車にボンティアック・ボンネビルを1日7万円で代車として使用し、保険会社Cに対して全額を請求したが、Cは支払いを拒否した。

判決

不法行為の被害者は、被害車両と同等の車種・代車料を請求できるが、信義則上損害の拡大を最小限度に抑える義務を有し、相当と認められる範囲でのみ代車費用が発生するとした。そして、Aの居住地域における高級車を扱うレンタカー店の相場を考慮して、1日あたり15,000円×11日分の代車費用の賠償を認めるにとどめた。

解説

被害者の所有車両キャデラックと代車に使用したボンティアック・ボンネビルはいずれもアメリカのゼネラルモーターズが製造販売していた自動車で、自動車の車格としてはそれほど大きなさはありません。

しかし、1日のレンタカー代が7万円というのはレンタカーの相場から考えると極端に高額であると言えます。一般に車格が同じであっても、国産車と比べて外国車のレンタカーは高額となる傾向があり、需要のあまりないアメリカ車では特にその傾向が強いようです。

そのため、被害者としては、キャデラックと同じ車格の国産高給車(クラウン、セドリック、グロリヤ等)を選ぶ信義則上の義務があり、もしそうであれば、代車費用は15,000円程度で済んだと裁判所は判断しました。

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