素因減額1(体質的素因による賠償額の減額)

交通事故で被害者が負傷すると、加害者は治療費等の損害を賠償する責任がありますが、中にはその人の身体的な特徴が原因で怪我の程度が大きくなる場合があります。このような場合に、損害額の減額を認めるべきかどうかが争われたのがこの判例です。

最高裁判所平成8年10月29日判決民集50巻9号2474頁、判時1593号58頁、判タ931号164頁

事例

30代の有職の主婦Aは自動車を運転中に、Bが運転する自動車に追突され傷害を負った。AとBは訴訟で損害額を争うことになったが、原審は、Aは平均的な体格と比較して首が長く、その身体的特徴がAに特有の傷害を引き起こしたとの鑑定結果を踏まえて、過失相殺の規定を類推適用して賠償額の減額を認めた。

判決 体質による減額は原則として許されない

人の体格や体質は全ての人が均一なものとは言えず、極端な肥満で転倒すれば重傷を負うような極端な程度の物でない限り、身体的特徴は個々人の体格差の範囲として当然にその存在が予定されているとした。そのうえで、Aの身体的特徴は平均より首が長い程度のもので、負傷しやすく慎重な行動を要請されるものとは認められないとして、原審判決を破棄した。

解説 身体的特徴が疾患に当たるかどうかがポイント

被害者の身体にたまたま何らかの特徴があり、その特徴が原因で怪我の程度が大きくなってしまった場合、その負担は加害者が負うべきなのか被害者が負うべきなのか、という問題です。

加害者としては、被害者がたまたま通常と異なる体格であったことによって賠償額が増えるのは納得いきませんし、被害者としても、自分の生まれつきの体格が変わっているからと言って賠償額を減らされるのは納得いかないでしょう。

本判決は、身体的特徴による減額を一応は認めました。しかし、それは被害者の身体的特徴が、日常生活において慎重な行動が必要なレベルの場合に限られる(身体的特徴が疾患に当たる)として、ただ首が人より長いという程度では、賠償額の減額要因となる程の特徴ではないと判断しました。

平均的な体格と減額が認められる程度の体格との線引きをどのようにして行うのか、という点は明確にされてはおらず、個別的に判断していくしかない状況です。

現在の実務においては、少なくとも、理想的な体格でない限り減額をする、といったことはないようです。

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