労災保険給付と損害額の控除

労災保険給付があった場合は、加害者の支払うべき損害賠償額から給付額相当が控除されます。ここで紹介する判例は、被害者にも過失が認められ過失相殺がなされる場合に、控除後に過失相殺すべきか過失相殺後に控除すべきかが争われたものです。
労災給付控除が先になされた方が被害者は多く賠償金を受け取れます。

最高裁判所平成元年4月11日判決民集43巻4号209頁、判時1312号97頁、判タ697号186頁

事例

Xは自動車運転中にYが運転する自動車と衝突事故を起こした。Xはこの事故によって労災保険給付を受け取った。また、XとYの過失割合は6対4となったが、過失相殺減額後のYのXに対する賠償金額が、前記労災保険給付額に満たなかったため、Xは、先に労災保険給付を減額して、残額を過失相殺すべきだと主張した。

判決

労災保険法には、労災保険給付が加害者の賠償より先に行われた場合は、加害者に対して損害賠償請求権を代位する規定があり、もし、Xの主張するよう先に労災保険給付の減額を行うとXが損害の二重填補を受けることになるとして、Xの主張を否定した。

解説

本ケースでは、被害者であるXの過失割合が大きいため、労災給付金額の方がYの支払うべき損害賠償額を上回り、Yの負担額はないとの判断にXが不服を申し立てたものです。

しかし最高裁は、他の事例でもよく根拠として挙げられる、代位規定の有無に着目しました。代位規定があるということは、給付金と損害賠償は損害の填補という共通の目的があるということですから、損害賠償額からの控除が認められます。

過失相殺と給付控除の順番については、控除後に過失相殺をすると、被害者が二重に利益を受けてしまうことになり、損害の公平な分担という点で相応しくありません。そのため判例は、Xの主張を否定し、過失相殺→控除という順番が妥当だと判断しました。

実務では、この判決以降、過失相殺→控除という運用がなされています。ただし、本ケースは労災保険給付の事例であって、健康保険、国民健康保険、公的年金制度についても同様のことが言えるかどうかは、明らかにはなっていません。

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