不法行為責任や債務不履行責任を負った場合には損害賠償責任が発生しますが、相手方の過失の程度に応じて賠償額が減額されることがあります。これを過失相殺と言います。
過失相殺の実質的根拠
交通事故に限った話ではありませんが、事故等が発生した場合に加害者が損害賠償責任を負います。このような賠償責任を負うのは当たり前にも思えますが、公平な損害の負担という考え方が根底にあります。
加害者側に過失があるため公平な観点から加害者に賠償責任が課せられるのです。そうであれば、事故に際して被害者側にも過失があった場合、その過失分を損害賠償額から差し引くのが公平な損害の負担という観点から求められます。これが過失相殺という形で表れているということができます。
過失相殺の法的根拠
以上の考え方に基づいて、民法では債務不履行責任・不法行為責任についてそれぞれ、被害者側に過失があった場合には過失相殺することが明記されています。
債務不履行については民法第418条に規定されています。
(過失相殺)民法第418条
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
不法行為については民法第722条第2項に規定されています。
(損害賠償の方法及び過失相殺)第722条第2項
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
なお、民法では過失割合は裁判所が定めることとなっていますが、交通事故の場合は事件の数が極めて多数なため、ある程度過失割合の相場が決まっています。これは裁判所によって同様のケースでの不公平感をなくすための例外的な措置です。
ただし、相場はあくまでも相場であって、その過失割合が個別的なケース全てに当てはまるわけではありません。実際の過失割合は、相場の過失割合をベースに裁判所が個別的に判断して決定するという点には注意が必要です。もちろんこれは裁判だけでなく示談でも同じことが言えます。裁判で裁判官が特殊なケースを加味して判断すると予想される場合には、示談でもその旨の主張がなされるためです。