対物超過修理費用特約とは、対物賠償責任保険で支払われる賠償金に上乗せして被害者に補償を提供する特約です。対物賠償責任保険では、被害者の車の時価が30万円であれば、修理費用に50万円かかったとしても、保険金は30万円しか支払われません。しかし、この特約を付けていれば、時価を超えても差額の20万円が修理費として補償されます。
対物超過修理費用特約の補償範囲
対物超過費用修理特約の補償限度額は50万円となっています。時価20万円の車で、修理費用100万円なら、対物賠責20万円+特約補償50万円で70万円が相手に支払われます。
また、この特約は文字通り、修理費用にしか補償されません。相手方が車を買い替えると言うならこの補償は受けられません。
2017年1月現在、チューリッヒ自動車保険でのみ補償限度額を無制限とすることができます。
本来、時価以上の賠償義務はない
対物賠償責任保険は、保険加入者の法律上の賠償責任を補償するものですから、保険加入者本人としても、差額の修理費用を支払う法律上の義務はありません。
では何のためにこの特約があるのでしょうか。得をするのは相手方なのに、なぜ自分が保険料を負担してまで義務のないことをしないといけないのか、と考える人もいるでしょう。
法律上の義務がない以上それも一つの考え方ですが、加害者の立場として気が済まないという人日本人の性格によるものも大きいでしょう。
付帯することで円滑な示談を実現
メリットもないわけではありません。それは示談がスムーズに進む可能性があることです。
被害者である相手からしてみれば、自分は被害者なのに修理費を自腹で払わなければならない訳で、理屈は理解できても、そう簡単に納得いくものではありません。大抵の場合は揉めることになります。事故で車が破損しても、大抵の人は買い替えよりも修理を選びます。
また、相手がこの特約のことを知っていて、付帯していることを前提に考えている場合もありますから、付帯していないと示談がこじれるというリスクもあります。
これらの理由からメリットが大きいので、なるべく付帯しておくことをおすすめします。
以下余談
ときどき、この特約を付けていると示談がスムーズにいくため刑事責任の軽減も期待できると言う人がいます。たしかに、示談がスムーズに行った方が裁判官の心証は良くなります。
しかし、刑事事件に発展するレベルの事故は、被害者が死亡しているか重傷を負っているような対人事故がほとんどですから、50万円の車両修理費用の有無が示談与える影響はほとんどないでしょう。