自動車事故で責任を負うのは何もドライバーに限ったことではありません。自らが運転していなくても自動車の所有者であることを理由に責任を負うこともあります。自動車を利用するのはとても便利なことですが、その対価として様々な場面で広く責任が及ぶことも知っておく必要があります。
自動車の所有者は事故のあった状況や、運転者との関係等の様々な要素が総合的に判断されて、運行供用者責任を負うことがあります。
ローン会社やリース会社が所有者の場合
自動車をローンで買った場合はローンが完済されるまで、所有権が担保としてローン会社に留保されるのが普通です。また、リースで車両を使っている場合は、所有者はリース会社となります。
このような場合、所有者であるローン会社やリース会社は運行供用者責任を問われる可能性があるでしょうか。これは感覚的にわかると思いますが、責任を問われることはありません。ローン会社やリース会社は自動車を管理下に置いているわけではなく、自動車そのものの価値を目的として所有権を持っているに過ぎないためです。
責任の有無の判断ポイントは、自動車の運行を事実上支配することができ、その運行を監視・監督すべき立場にあるかどうかで判断されます。
友人に自動車を貸した貸主の場合
上に書いた判断ポイントを考慮すると、友人に自動車を貸した貸主は原則として運行供用者責任を負うことになります。
一見、友人に車を貸した状態ではその運行を支配しているとは言えないようにも思えます。しかし、貸主はいつでもその友人に車を返すように要請できるため事実上の支配が存在する、とするのが判例の見解です。
このように現在の実務では友人に自動車を貸した所有者は原則として運行供用者責任を負うということになります。これに対応するには、自らの任意保険で運転者限定を「なし」にするか、車を貸す友人に他車運転危険補償特約やドライバー保険が付帯されているかをきっちり確認する必要があります。
なお、例外的に貸主が責任を免れた事例としては、数時間の約束だったのに友人が車を返さずに1ヶ月後に事故を起こしたケースがあります。このような場合はもはや貸主の運行管理下にはないと判断されました。