任意保険では、多くの損害保険会社がゴールド免許割引を導入しています。しかし、本来ゴールド免許とは運転免許制度の一環であり、任意保険の制度ではありません。少し言い方が悪いかもしれませんが、現状は損保業界が運転免許制度にうまく便乗しているに過ぎません。
そのため、実務的な運用の面で本来の保険の趣旨と若干の齟齬が生じている状況にあります。
道路交通法での運転者区分
まずは、本来の道路交通法制度から見ていきましょう。免許証の色にはグリーン、ブルー、ゴールドの3種類がありますが、運転者の区分方法としてはもう少し細かくなります。
ゴールドは優良運転者、グリーンは初心者ですが、ブルーには初回更新者、一般運転者、違反運転者の3種類が混在しています。
初回更新者とは、前回グリーン免許だった人が初めて更新することを言います。この場合免許の有効期間は3年間です。
一般運転者とは、過去5年以内に軽微な違反を1回だけした運転者を言います。こちらの場合は免許の有効期間は70歳以下の場合5年間です。ブルーの運転免許は3年で、ゴールドは5年だと思っている人も多いですが、平成14年の道路交通法改正により変更されました。なお優良運転者・一般運転者の免許有効期間は、71歳では4年間、72歳以上では3年間です。
違反運転者とは、過去5年以内に軽微な違反が2回以上あったか軽微でない違反があった運転者です。
※軽微な違反とは、3点以下の違反を言います。
自動車保険での齟齬
上の内容を読んでいただければわかると思いますが、違反運転者はブルー3年で、一般運転者は5年ですから、違反運転者になってしまった方がゴールド免許を早く取得できる場合が出てきてしまいます。
つまり、違反運転者の方が最大2年間、任意保険のゴールド免許割引を早く受けられることになるのです。反則金分と違反者講習手数料差額と講習時間が長い点を考慮しても、2年分の任意保険のゴールド割引分と考えれば安いものでしょう。
なぜこのようなことになるのかと言いますと、最初に書いたように損害保険会社が運転免許制度に上手く便乗しているに過ぎないためです。
では、このような状況が解消される見通しはあるのでしょうか。ここからは筆者の個人的な考えですが、おそらくは難しいと思います。
現状の齟齬が解消されるには、道路交通法の改正が損害保険会社の何らかのルール変更の少なくともどちらかが必要です。しかし、国としては、民間企業が勝手に制度に乗っかっていることによる齟齬を解消する筋合いはないため、少なくとも本件を目的とした改正はなされないでしょう。
となると、損保業界が何らかの手を打つしかないのですが、こちらも難しいと思われます。免許証のような公的な証明書以外に、被保険者がどれだけの事故を過去に起こしてきたのかの証明のしようがないからです。
最後になりますが、免許証の有効期間を短縮するためだけの道路交通法違反はしないようにお願いします。