交通事故が発生すると、修理期間中あるいは代車の買い替えまでの期間中は自動車を利用することができませんから、その期間は代車を使うことになります。代車費用は基本的に加害者が負担すべきですが、その期間が長期になると、どちらがふたんすべきかが争われることがあります。ここで紹介する判例は、どのような場合に代車費用を加害者側が負担すべきかを示したものです。
東京地裁判決平成13年12月26日交民34巻6号1687頁
事例
Xは自分の所有する自動車を運転中にAの運転する自動車と衝突した。Aの過失割合は100%だった。XはAの保険会社Yから提供された代車を利用していたが、Yは110万円以上は払えないとXに通告してきた。Xは具体的な算定根拠の提示を求めたがYはそれに応じず金額のみを繰り返し通告してきた。
Xは修理するか新車を購入するか迷ったが最終的に新車購入を決め、それとともにYの代車返還請求に応じた。その後もXは新車購入までの約50日間自費で代車を借りたが、その一部の負担をYに請求した。
判決
判決は以下の判断をしたうえで、11日間分の代車費用をYが負担するものとした。
一般に示談交渉を担当する加害者代理人の損害保険会社は、被害者に対して合理的な損害賠償の算定方法について真摯に説明すべきである。特に被害者に落ち度のない事故では被害者感情が大きいため特にその必要性が大きい。
そのため、被害者が納得するための説明の時間や修理か買い替えかの判断を検討する期間についても加賀者は代車費用を負担する必要がある。
解説
この判例のケースのように、修理費用や全損の評価額で揉めることは少なくありません。このような場合、修理するか買い替えるかの判断をするための期間が必要になります。
裁判所は基本的に、修理に必要な期間、あるいは買い替えに必要な期間に限って代車費用を認めていますが、本ケースのように、算定額の具体的根拠を明示しない場合には被害者は決断にかかる時間が増えると考えられます。
このような事情が存在する場合には、その事情に応じて相当と考えられる期間分の代車費用を加害者に負担させることができるとしました。