自賠責保険では、任意保険とは異なり、過失相殺による補償の減額が軽減されています。これは自賠責保険が被害者の救済を趣旨とすることの現れであると言えます。
過失相殺
民法不法行為法では、他人に対して不法行為を行った者は、その損害を賠償しなければならないと定めています。ただし、被害者にも過失がある場合は、その過失の程度に応じて賠償額が減額されます。これを過失相殺と言います。
任意保険の過失割合と補償割合
任意保険の対人賠償責任保険と対物賠償責任保険は、文字通り法律上の賠償責任を補償する保険です。そのため民法不法行為上生じる責任を限度に補償を受けることができます。つまり、自分の過失割合以上は法律上の損害賠償責任がありませんので、保険金もその限度でしか支払われません。
これを被害者側から見てみれば、過失割合分がそのまま補償から減額されるということになります。
例えば自分の怪我について1000万円の被害があっても、自分に3割の過失があると判断された場合、過失相殺により、補償を受けられるのは700万円となってしまいます。
自賠責保険過失割合と補償割合
しかし、自賠責保険は被害者の救済がその趣旨とされていますから、被害者に過失がある場合でも、任意保険と比べて補償額が減額されにくくなっています。自賠責保険の保険金は過失割合が7割未満であれば補償額の全額を受け取ることができます。
上記の例で言えば、3割の過失ですから、補償額は全額の1000万円を受け取ることができます。
ただし、相手がある事故でも、100%被害者過失の事故の場合には、そもそも相手方に賠償義務がありません。例えば、停車している先行者に追突して、追突した車のドライバーが負傷した場合は通常100:0の事故となりますので、負傷について自賠責での補償は受けられません。
この場合は、自分の任意保険の人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険での対応となります。