信号と横断歩道のある交差点で、歩行者が横断中に発生した事故の過失相殺例を紹介します。
ここで紹介するのはあくまでも相場であって、その他に過失割合が加減算されることや、個別の特殊な事情が考慮されることがありますので注意してください。
目次
1.自動車が赤信号を無視(横断歩道が青信号)
自動車:人=100:0
自動車は青信号で横断中の歩行者を妨げてはいけないと決められています。常識的に考えて100:0が妥当だと感覚的に理解できるでしょう。
ただし、歩行者は単に道路を横断している場合だけでなく、途中で引き返したり立ち止まったりした場合でも、自動車の過失割合が減算されるわけではないため、歩行者の態様には十分な注意が必要です。もっとも信号無視さえしなければいいというだけの話なので、あまり大きな問題ではないでしょう。
2.自動車が赤信号を無視(横断歩道が黄信号)
自動車:人=90:10
歩行者用信号が黄信号(青の点滅)の場合、歩行者は新たに横断を始めてはいけないことになっています。安全に横断歩道を渡り切れない可能性があるためです。それにもかかわらず横断を始めてしまった歩行者には10%の過失割合が加算されます。
なお、横断開始時点で青信号であれば、途中で黄色になったとしても過失割合は加減されません。
3.歩行者が赤信号を無視(自動車が青信号)
自動車:人=30:70
歩行者は赤信号では横断を開始することができません。そのため過失割合が高くなっています。一方で、自動車は横断歩道がある場合は信号が青だったとしても、歩行者がいないかどうか安全を確認する義務があります。そのため事故が起こったということは前方不注視があったとかブレーキが遅れた、ブレーキを踏んでも間に合わない危険な速度で運転していたという過失が推定され、過失割合が加算されます。
ただし、車が避けきれないタイミングで歩行者が飛び出してきた場合は、自動車側の過失割合はゼロとなります。
4.歩行者が赤信号無視(自動車が黄信号)
自動車:人=50:50
自動車は黄色信号で進行することができるのは、安全に停止できない場合に限られています。歩行者が信号無視をしていることに変わりはありませんが、自動車側が青信号の場合と比べて責任が加重されています。
5.歩行者・自動車共に赤信号
自動車:人=80:20
交差点の信号が全て赤となる瞬間がありますが、この時に自動車、車の双方が信号無視をした場合は、立場の弱い歩行者側が優遇され、自動車側が重い責任を負うことになります。
なお、次にどちらの信号が青になるかは、過失割合の算定には基本的に影響しません。「もうすぐ青になるだろう」という考えでも「赤になったばかりだからいけるだろう」という考えでも、信号無視という意味では同じものと評価されるためです。
6.横断途中で信号が赤になった場合(安全地帯なし)
自動車:人=80:20
歩行者の歩行速度によっては、青信号で横断を始めても青の間に渡り切れずに赤になってしまう場合もあります。この場合は渡り切れるかどうかの判断を誤った歩行者側の責任が加重されます。
7.横断途中で信号が赤になった場合(安全地帯あり)
青信号で横断開始なら、自動車:人=70:30(黄信号で横断開始なら、60:40)
中央分離帯のあるような大きな道路では、道路の中央に安全地帯が設けられている場合があります。青信号で横断を開始したのに、安全地帯付近で信号が赤になってしまうことがありますが、そこで止まらずに横断しようとした場合には、歩行者の責任が加重されます。中央分離帯がないケースと比べても責任が重くなっています。
歩行者が横断を開始したのが黄信号(青信号点滅)の場合は、歩行者の責任がさらに加重されます。
8.横断途中で信号が赤になった場合(自動車が赤信号無視)
自動車:人=100:0
歩行者が横断歩道を渡り切る前に信号が変わってしまった場合でも、自動車側が赤信号で見切り発車して事故が発生したら、自動車側が全責任を負います。どれだけギリギリであろうと赤信号で発車したことには重い責任が付きまといますので十分注意してください。