警察庁の発表によると2016年の死者数は3904人でした。死者数が4000人を割り込んだのは1949年以来で67年ぶりです。2015年との比較では213人(5.2%)減少しています。
減少しているとは言え、毎年4000人近くの人が亡くなっているという事実は、他の主要な輸送機関である鉄道や飛行機と比較すると、極めて深刻な状況にあると言えます。
※この記事で使っているグラフは全て警察庁発表の「平成28年中の交通事故死者数について」から引用しています。
目次
交通事故死亡者数の推移
グラフを見れば交通事故の死亡者数は1990年台から順調に減少していることがわかります。死者数の減少には危険な運転の減少、シートベルト着用義務化、飲酒運転の厳罰化、安全運転意識の向上等の様々な事情が要因となっていると考えられます。
なお、近年は少子高齢化社会が進み人口が減少に転じていますが、緩やかに人口当たりの死者数も減少しています。単純に人口減少が死亡事故減少の原因とは言えなさそうです。
都道府県別の死者数
都道府県別の死者数でなにかわかることがないか調べてみました。
死者数トップ5
- 1位 愛知県 212人
- 2位 千葉県 185人
- 3位 大阪府 161人
- 4位 東京都 159人
- 5位 北海道 158人
やはり死者数は人口の多い都道府県が上位を占めています。
人口10万人あたりの死者数トップ5
- 1位 福井県 6.48人
- 1位 徳島県 6.48人
- 3位 香川県 6.25人
- 4位 高知県 5.77人
- 4位 長野県 5.77人
全国平均の人口10万人あたりの死者数は3.07人となっています。
こうしてみると、死亡交通事故は都道府県は都会よりむしろ郊外に多い傾向があることがわかります。この理由は、郊外は都会と比べて自動車のスピードが出やすいためだと考えられます。
なお、10万人あたりの死者数が最も少ないのは東京都の1.18人です。2位は神奈川県、3位が大阪府といずれも都心です。スピードの出しにくい都心では交通量は多いですが、死亡するほどの重大事故は比較的発生しにくい状況ということができます。
30日以内死者数も同程度に減少傾向
交通事故の死亡者数は事故から24時間以内の死者をカウントします。そのため、交通事故死者数の減少には、医療技術の向上による延命が大きく寄与しているとも言われています。
しかし、24時間以内死者数と30日以内死者数は、調査開始以来、ほぼ同じ傾きで減少しており(「交通事故死者数の推移」参照)、噂は事実とは異なることがわかります。
高齢者の死者数
警察庁も発表の中で指摘していますが、65歳以上の高齢者の死者数に占める割合が増加を続けていることが問題となっています。
2016年の高齢者の死者数は2138人で、全体に占める割合は過去最大の54.8%となっています。また、グラフを見れば高齢者の交通事故死者数はほぼ横ばいの状態となっています。
高齢化社会が進む中で、死者数は増加していないのですから、人口当たりの死者数は減少している(「人口10万人あたりの死者数推移」参照)とも言えます。しかし、全体が減少傾向にあることを考えると、何らかの対策が必要と考えられます。
飲酒死亡事故件数の推移
2016年の飲酒死亡事故の件数は213件で前年の201件より増加しています。
過去の推移を見てみると、飲酒運転死亡事故の件数は2006年から2008年にかけて大きく減少していますが、その後は緩やかな減少傾向となっています。
2006年からの急な減少は、2006年に発生した福岡で3人の子供が犠牲となった飲酒運転死亡事故をきっかけとした取締強化が大きく影響していると考えられます。しかし、その後の推移をみると、交通事故死者数全体の減少と比べると、あまり減少しておらず、かなり厳しい状況と言えます。(2016年にでは増加に転じてしまっています。)
死者数の割合としては高齢者問題と比べて少ないですが、こちらもさらなる対策が不可欠な状況にあると言えるでしょう。飲酒運転に罪の意識を感じていない人が多くいるように感じられます。このような人達を減らすためには、今までとは異なるキャンペーンが必要二も感じられます。
今後の推移について
政府は2020年までに交通事故死者数を2500人以下に減らすことを目標として掲げています。しかし、現在の減少具合を見ると、達成はかなり困難と思われます。
間もなく自動ブレーキ搭載車をはじめとした自動運転自動車が本格的に市場参入してくることになりますが、これがどれだけ事故に歯止めをかけられるかが、今後の大きな注目ポイントと言えるでしょう。
また、減少傾向が鈍化している高齢者死亡事故と飲酒運転死亡事故の歯止めをかけるためのさらなる政策にも注目したいところです。