現代の高度な自動車社会において交通を円滑に行うことは非常に重要なことです。そのため、道路交通法では自動車が同時に進行できない場合にどちらが優先するのか定めています。ここでは、優先関係について詳しく解説します。
「優先」とはどういうことか
優先関係を正確に理解するには、「優先」とは具体的にどのような意味なのかを知っておくことが重要です。一般的には「相手に先に行くように道を譲ること」というイメージでとらえられているようですが、それは正確な理解ではありません。
「優先」とは、道路交通法上の「進行妨害」をしてはならないことを意味します。そして進行妨害の定義は次の通りです。
道路交通法第2条第22項 (進行妨害の定義)
車両等が、進行を継続し、又は始めた場合においては危険を防止するため他の車両等がその速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあるときに、その進行を継続し、又は始めることをいう。
道路交通法によれば、「進行妨害」とは、交差する道路の走行車に急ブレーキや急ハンドルによる回避行動を取らせることを言います。
つまり、優先道路を走行していた車が一時停止したのであれば、非優先の車が先に通行しても、道路交通法違反とはならないということになります。(もっとも、慣習的には優先道路側が先に行くことが多いのは事実です。交通安全には慣習に従うことも大切です。)
もう少し踏み込んだ解釈をするなら、脇道から主要道路に進入する場合は、大抵はブレーキを踏ませないような距離でないと進入しないですが、上の理屈で言えば、安全に減速できる距離であれば進入しても違反にはならないということになります。
優先関係の程度
以下の要素によってどちらの車両が優先するかが決まります。基本的に上の優先関係の程度が大きく、上の方で優先関係が決定できない場合は下の関係についてみていくことになります。
例えば、道幅が明らかに異なる道路でも、信号機が設置されていれば、青信号が優先されるのは、常識的に考えて当然のことでしょう。
ただし、下の方の優先関係はあいまいな場合もあります。例えば、左方優先原則と直進車優先原則のどちらが優先するかは明確ではありません。
- 信号機がある場合や交通整理がされている場合
- 一方の道路が優先道路と定められている場合
- 一方の道路のみに一時停止線がある場合
- 一方の道幅が明らかに他方より広い場合
- 左方優先原則
- 直進車優先原則
信号または交通整理
当たり前の話ですが、信号機のある場所では必ず信号の指示に従わなければなりません。信号の色の意味は次の通りです。
- 青:進んでもよい
- 黄:停止しなければならない。安全に停止線前で停止できない場合のみ進んでもよい。
- 赤:停止しなければならない。
- 青矢印:矢印に示された方向にのみ進んでもよい。
- 黄点滅:注意して進行しなければならない。
- 赤点滅:一時停止しなければならない。
警察官や交通整理員が交通整理を行っている場合、その指示は信号と同じ効果があり、指示に従わないと信号無視と同様の道路交通法違反となります。
なお、道路工事の交通誘導員や駐車場の警備員等が行う誘導は、道路交通法上の交通整理ではありません。したがって、誘導に従わなかったとしてもそれだけで道路交通法違反となるわけではありません。
ただし、交通誘導員や警備員の誘導に従わなかったことによって事故が発生した場合、民事上・刑事上の責任は通常と比べて加重されます。そもそも交通安全の面から従わないと危険ですから、必ず従うようにしましょう。
ただし、信号に反する誘導がなされた場合、例えば赤信号なのに進むように誘導してきた場合は、そのまま進んでしまうと違反になってしまいますので注意してください。
優先道路
交差点であっても、センターラインが途切れずに表示されている交差点や、右の図のような標識のある交差点では、非優先道路の自動車は優先道路の通行車両の進行妨害をしないように通行する必要があります。
一時停止線
一方の道路のみに一時停止線がある場合は、一時停止線のない道路の車両が優先されます。
なお、多くの交差点では一時停止線が標示されていますが、全ての一時停止線で停止しなければならないわけではありません。一時停止が必要なのは、一時停止の標識・標示がある場合のみです。
道幅
道幅が明らかに異なる道路同士の交差点では、広い道路の方が優先され、狭い道路の車両は妨害しないように配慮する必要があります。もっとも、近年に整備された道路では多くの場合一時停止線が標示されています。
左方優先の原則
以上の要素で優先関係が判断できない道路では、同じタイミングで交差点に進入する自動車画いる場合、左側にいる自動車が優先して通行できます。これを左方優先の原則と言います。
そもそも、なぜ左方が優先するのでしょうか。
これは日本が左側通行だからです。左側通行ということは、運転者から見れば左側の視界が悪く、右側の視界は比較的開けています。
直進車優先の原則
直進車は右折しようとする対面通行車に優先して通行することができます。これはどちらも同じ優先度の道路を走行しているわけですから、信号の有無等には関係ありません。