事業用の自動車が交通事故で運行できなくなった場合、加害者はその自動車が運行できなかった日数分の休車損害を負担する必要があります。ここで紹介する判例は、休車損害の期間と金額について示したものです。
名古屋地裁判決平成15年5月16日交民36巻3号732頁
事例
X会社の事業用トラックをAが運転していたところ、対向車線のBの自動車がセンターラインをオーバーしてきて衝突した。Bはこの事故で死亡した。
Xのトラックは警察の検証のために16日間留置され、修理に79日かかったため、合計95日分の休車損害をAの遺族Yに対して請求した。Yはこれに対して、留置はXが警察の要請を受けて任意でなされたものであるから、当該留置期間分の休車損害を支払う義務はないと反論した。
判決
トラックが留置されていた原因となったのはBの自動車の運転行為である以上、警察の留置期間についても休車損害を認めるべきと判示した。そのうえで、金額算定については、事故前2か月分の営業利益の1日あたり利益の平均額である10,217円とした。
ただし、X社にはたまたま事故の前後に退職者がいたため、Bは空いた自動車で営業することで損失を補填できたため、その部分の休車損害を控除したうえでYに支払いを命じた。
解説
休車損害をめぐる問題には、休車期間をどう認定するかという点と、逸失利益をどう評価するかという2つのポイントがあります。
休車期間については、本ケースのように修理期間以外の期間の休車損害が認められるかどうかが争いとなることが多くあります。
事例にも記載している通り、本ケースではXが任意に警察にトラックを留置させているのだから、YとしてはXが勝手にやったことで、なぜ自分が負担をしないといけないのか、と考えるのは自然なことでしょう。
しかし、判決は捜査が必要になった発端はBにあるのだから、留置中の休車損害にも相当因果関係があると判断しました。
逸失利益の評価方法については、実務では、運賃収入の実績から燃料代やドライバーの人件費等を差し引いた額と考えられています。人件費については本判決にある通り、ドライバーが他の業務に従事した場合には、その分人件費の逸失は存在していないものとして扱い、損益相殺がなされます。