代位規定がない保険の補償と損益相殺

交通事故がきっかけとなって被害者に保険金等の補償が行われた場合、それが損益相殺の対象となるかどうかは、補償を行った保険会社等が加害者に対する賠償請求権を代位するかどうかが基準の一つです。ここで紹介する判例は、代位規定のない保険の補償について損益相殺が認められるかどうかが争われたものです。

最高裁判所平成元年1月19日判決判時1302号144頁、判タ690号116頁

事例 代位規定がない場合でも損益相殺されるのか

Xは加害者Yの運転する自動車によって負傷したが、自らが加入する生命保険会社の所得補償保険に加入していたため、休業損害の補償を受けることができた。その後XはYに対して事故の損害賠償請求訴訟を提起したが、Yは所得補償保険の保険金相当額の損益相殺を主張した。
原審は、損害保険には法律上の保険代位規定があるから、その補償額が損害賠償請求額から控除されると判断したためXが上告した。

判決 実際に代位行使しなくても法律上代位可能なら控除

本ケースの所得補償保険は、傷害や疾病を条件として補償を受けられるものではなく、それによって休業損害が発生した場合に実損額を補償する保険である。この保険金を支払った保険会社は(旧)商法662条1項の規定により、不法行為に基づくXのYに対する損害賠償請求権を代位取得するから、保険金支払い額の限度でXの賠償請求権は控除される。保険会社がその権利を行使するかどうかは、この結論を左右しない。

解説

本ケースの所得補償保険等のように、実損を填補するタイプの保険であるのに、損害賠償請求権の代位規定がないものがあります。損害を填補する保険金が支払われた場合は、法律上は保険会社が賠償請求権を代位取得します。代位規定がないということは、保険会社がその権利を行使しない、つまりYに対して請求しないということです。

最高裁判所は、損益相殺の対象となるかどうかは、「代位規定が存在するかどうか」ではなく「代位行使する権利を取得したかどうか」という点に着目して判断したということができます。

被害者が保険料を支払った保険なのに、加害者が得をしてしまうのは納得いかないかもしれませんが、仮に保険会社がYに保険金額相当の賠償を求めて来たら、Yとしては法律上支払わざるを得ませんから、法律を第一に考える司法の判断としては妥当なものと言えます。

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