本来、損害内容と損害額は、公平な裁判の場で個別的に判断されるべきものです。しかし、昭和30年代から自動車が急速に普及したのに伴い、交通事故件数も激増し、裁判所の事件処理能力を超える訴訟が提起されるようになりました。
そのため、過失相殺の割合や損害額を定型化することで、時間と費用の掛かる訴訟の回避を促す必要が出てきました。
複数の定型化基準
現在の実務での過失割合や損害項目の定型化には、赤い本、青い本、緑の本と呼ばれる複数の基準が存在します。
赤い本
赤い本とは、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」のことです。表紙が赤いため赤い本と呼ばれています。赤い本は東京都及びその近郊での交通事故を想定した基準となっています。
青い本
青い本とは、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行する「交通事故損害微笑額算定基準 実務運用と解説」のことです。表紙が青いため青い本とか青本と呼ばれます。赤い本が東京周辺での事故基準であるのに対して、青い本は全国での事故を想定した基準を定めています。そのため、基準の金額にも幅が設定されています。
緑の本
緑の本は、大阪地方裁判所民事交通訴訟研究会が公表している「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」のことです。表紙が緑色のため緑の本と呼ばれます。発行元や正式名称からもわかる通り、大阪近郊での事故を想定した基準となっています。大阪地裁での裁判ではこの基準が採用されています。
自動車保険の基準
自賠責保険では、自賠責損害調査事務所の認定した金額が支払われますが、これも「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金当の支払基準」という基準があり、これに基づいて算定されています。
任意保険の場合は、かつては業界基準がありましたが、独占禁止法上の問題があり、現在では損害保険会社が独自に基準を定めて、これをもとに示談を進めます。
損害項目の定型化
損害項目は、損害の内容が積極的損害か、消極的損害か、精神的損害かという分類のしかたと、損害の原因が、傷害による損害か、後遺障害による損害か、死亡による損害かという分類んの仕方があります。
それぞれをまとめると次の表のようになります。