交通事故は原則として自動車の走行中に起こった場合のみ責任を負います。しかし、クレーン自動車のクレーン側の作業中の事故や自動車の荷物の積み下ろし作業中の事故では、状況によっては運行供用者責任を問われる可能性があります。
クレーンの操作中の事故
自動車損害賠償保障法第2条第2項は次のように規定しています。
自動車損害賠償保障法第2条第2項
この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。
ここでいう「当該装置の用い方」とは、自動車を走行させることだけを言うのではなく、特殊自動車においてその特殊な用い方をする場合も含まれていると理解されています。つまり、クレーン自動車がクレーンを使って作業している最中は、自賠法で言う運行に当たり、自動車の走行中と何ら変わりない義務を負うということになります。
具体的な事例では、クレーンで車を釣り上げる際に高圧電流線に接触してしまい、作業員が感電死したケースで責任が認められたものがあります。
なおクレーン自動車以外でも、ミキサー車やシャベルカー、ダンプカーによる作業でも同じことが言えます。
荷物の積み下ろし中の事故
荷物の積み下ろし中の事故においても、運行供用者責任が問われる可能性があります。
フォークリフトで荷物の積み下ろしをしている最中に、フォークリフトから荷物を落下させてしまい、たまたま近くを通行していた通行人が下敷きになった事案で、裁判所はフォークリフトでの積み下ろし作業は、貨物自動車の「当該装置の用い方」に従い用いたものであるとして、運行供用者責任を認めました。
フォークリフトでの作業なのに自動車としての責任を認めたのは変な感じもしますが、貨物自動車での荷物の積み下ろしは、自動車によってはフォークリフトでの作業が必須のものもありますから、そのような自動車でのフォークリフト作業中の事故は、実質的に貨物自動車の事故と同じであると考えれば納得できます。
逆に、荷物積み下ろし中でも運行供用者責任が否定されたケースもあります。作業者がトラックの荷台に上がって荷下ろし作業を行っているときに、誤って荷台から転落して死亡したケースでは、荷台の使用が有力な事故の原因になっているとは言えないとして、運行供用者責任を否定した事例があります。
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