道路交通法に違反すると、走行中に後方からスピーカーで停車するよう求められます。その他にも例えば検問のように様々な理由で、警察官から停止を求められることがあります。
公務執行妨害罪?
警察官に停止するよう言われているのに、それを無視して逃げることは、警察官の公務の執行を妨害しているのですから、公務執行妨害罪に問われると思う方もいるようです。しかし、公務執行妨害罪は、公務員に対する「暴行又は脅迫」が犯罪の成立要件となっています。
刑法第95条第1項
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
そのため、単に停止するよう逃げただけでは暴行も脅迫も行う余地がありませんから、公務執行妨害罪は成立しません。
※ただし、暴行は警察官に向けられるものとは限らない、とされています。単に逃げただけではセーフですが、警察官が取り調べようとした物を壊してしまうような行為は公務執行妨害罪となる可能性はあります。
警察官現場指示違反?
警察官現場指示違反という違反が道路交通法上規定されています。この違反の名称から、警察官の制止を無視するとこの違反になると思っている人が非常に多いようです。
「現場」で「警察官」の制止「指示」に「違反」しているのだから、「警察官現場指示違反」になると思うのも無理はないのですが、これにも該当しません。
警察官現場指示違反とは、道路交通法第4条第1項後段に違反することを言います。
道路交通法第4条第1項(公安委員会の交通規制)
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。
この条文を見れば、警察官現場指示違反とは、警察官が道路標識等の代わりに行う交通規制に従わないことを言うのがわかります。これは、単にパトカー等から制止を求められた場合は含まれません。
⇒ 警察官現場指示違反・警察官通行禁止制限違反の罰則と違反点数
停止命令違反?
警察官は、ある自動車が法律に定める条件を満たしていると判断した場合、それを停止させる権限を持っています。例えば次の場合、自動車を停止させることができます。
- 自動車に整備不良が認められるとき
- 飲酒運転の可能性があるとき
- 無免許運転の可能性があるとき
- 過労運転の可能性があるとき
- 半ドア等の危険な状態で運転してるとき 等
これらの法定の警察官による停止命令に当てはまる場合は、停止命令に違反するとその法律違反として処罰の対象となります。しかし、法定の条件に合致しない理由で制止を求められても、それだけで違反となることはありません。
例えば、年末によくある飲酒運転を確認するための交通検問は任意捜査ですので、無視してもそれだけで違反となるわけではありません。
もっとも、制止を求められたその瞬間に警察官の制止理由が法の定める命令によるものなのか、任意なのか区別するのは難しいですし、任意だったとしても逃げると怪しまれるので、やはり停止するのが無難でしょう。