飲酒運転自動車による死亡交通事故が未だに後を絶ちません。飲酒運転や無免許運転等の悪質なドライバーが大きな交通事故を起こす度にニュース等で大きく報道されます。
交通事故で人を死傷させた場合には過失運転致死傷罪に問われる可能性があります。しかし、飲酒運転や無免許運転のように悪質な運転で事故を起こした場合は、より罪の重い危険運転致死傷罪に問われる場合もあります。
飲酒運転者が「正常な運転ができた」と主張する理由
飲酒運転をして捕まったドライバーが、飲酒をしていたことは認めているのに「正常な運転ができた」と主張することがあります。
飲酒運転をしていたのに正常な運転ができるはずがない、矛盾している!と考えるのが自然だと思います。なぜこんな奇妙な主張をするのでしょうか。
その答えは、危険運転致死傷罪を規定した自動車運転死傷行為処罰法にあります。
自動車運転死傷行為処罰法
第2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
(以下省略)
この条文にある通り、危険運転致死傷罪を問うには
- 飲酒運転をしたこと
- 正常な運転が困難な状態で自動車を走行させたこと
の2つの要件を満たす必要があります。
この2の要件を回避して危険運転致死傷罪を免れようとしているのが、一見矛盾した主張の理由であると考えられます。
無免許運転なのに「技能を有する」とされたケースも
よく似たケースで無免許運転なのに「技能を有する」として危険運転致死傷罪が適用されなかったケースが実際に存在します。
「技能を有しないで運転した場合」には危険運転致死傷罪が適用されますが、「無免許運転をした場合」について危険運転致死傷罪では一切触れられていません。
一般人の感覚で言えば「無免許=技能を有しない」ということになりますが、刑事裁判では文言の解釈が厳格に行われるため、繰り返し運転をしていたこともあり「技能を有する」と判断され危険運転致死傷罪の適用が回避されてしまいました。
この事件からも読み取れるように、危険運転致死傷罪という罪は一般的な市民感覚から乖離しているのが実情で、更なる議論により改正することが望まれます。