当て逃げ・ひき逃げの同乗者の責任

当て逃げ事故やひき逃げ事故で、たまたまその車に同乗していた人が、事故を知りながら黙っていた場合、どのような罪になるのでしょうか。

運転者の責任

同乗者の責任を考える前に、まず運転者にどのような責任があるのかを確認しておきましょう。

自動車の運転者には、事故が発生したことを警察に通報する報告義務、事故の被害者の手当てをしたり救急車を呼ぶといった救護義務があります。(道路交通法72条1項)

当て逃げ・ひき逃げはこれらの義務に違反する行為ですから、怪我人が発生していた場合には(つまりひき逃げの場合には)5年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。(道路交通法117条)

また、相手が死傷している場合、ひき逃げであるかどうかに関わらず、過失運転致死傷罪に問われる可能性があります。(自動車運転死傷行為処罰法5条)

もちろん、ひき逃げとなると責任は重くなりますので罪に問われる可能性は高くなります。

同乗者が「その他の乗務員」に該当するかどうかがポイント

道路交通法72条1項は、報告義務や救護義務等の運転者としての義務を「その他の乗務員」にも課しています。このような書き方をすると、車に乗り合わせていた人が全て義務を負うようにも思えますが、そうではありません。

「その他の乗務員」とは、業務上・職務上の関係その車に同乗している人のことを言います。

「その他の乗務員」に該当する同乗者

例えば、長距離バスの交代運転手、バスガイド、営業車両の同乗者等は、業務・職務のために運転者に同乗していますから、「その他の乗務員」に該当することになります。

「その他の乗務員」に該当しない同乗者

これに対して、バスやタクシーの乗客、好意同乗者等、偶然乗り合わせた自動車が当て逃げ・ひき逃げをした場合には、業務上・職務上の同乗者ではありませんから、「その他の乗務員」には該当しません。

したがって、報告義務や救護義務と言った道路交通法上の義務を負うこともありませんので、罪に問われることはないと言うことになります。

ただし、運転者に対して逃げるようにそそのかした場合は教唆犯(刑法61条)となり、運転者と同じ責任が問われる可能性があります。

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