運転免許に対する処分には免許停止(免停)と免許取消(免取)があります。免許取消の処分を受けると、無期限で運転することができなくなってしまいます。その意味で免停と比べて重い処分と言えます。
再度自動車を運転するには免許を取得し直さなければなりませんが、取消内容に応じて再取得ができない欠格期間が存在します。
点数以外の免許の取消事由
運転免許の取消は違反点数の累積による処罰としてのイメージが強いですが、累積点数以外でも免許取消となる場合があります。道路交通法第103条で規定されている免許取消事由は次の通りです。
- 精神病、意識障害・運動障害をもたらす病気である場合
- 認知症である場合
- 目が見えない等の運転に必要な身体機能に障害のある場合
- アルコール、麻薬、覚醒剤等の中毒者である場合
- 道路交通法等の規定に違反した場合
- 重大違反唆し等をした場合
- 道路外致死傷をした場合
- その他著しい交通の危険を生じさせる恐れがある場合
以上の取消事由を見れば、累積点数以外にも様々な理由で免許が取り消されるおそれがあることがわかります。8を見ればわかるように、危険なことをしていると警察に判断されてしまうと、そのさじ加減で免許取消となる場合もあるということです。
見渡してみれば大体常識的な感覚から想像のつくような理由ですが、2点補足しておきます。
まず1点目ですが、6の重大違反唆し(そそのかし)等とは、例えば飲酒運転を教唆した場合があります。自分は直接運転に関わっていない場合でも、重大な違反行為をそそのかすような人には運転免許を与えないという趣旨です。
そして、2点目ですが、7の道路外致死傷は道路以外の場所(スーパーの駐車場や私有地内の道路)での人身事故のことです。道路外での事故は道路交通法の適用を受けず、それゆえどのような事故を起こしても免許の点数に影響はありません。
つまり、どんな大事故を起こしても、点数の累積による免取処分はできません。
しかし、私有地の道路だからと言って飲酒運転死亡事故を引き起こすような人を公道で運転させるのは常識的に考えても危険ですから、ここに規定されているというわけです。
累積点数による免許取消と欠格期間
道路交通法違反による累積点数で免許取消となる場合、その点数は前歴の有無や取消回数によって異なります。
前歴 | 点数 |
---|---|
なし | 15点~ |
1回 | 10点~ |
2回 | 5点~ |
3回以上 | 4点~ |
また、累積点数で免許が取り消された場合、前歴の回数や点数によって欠格期間が課せられます。欠格期間中は運転免許を再取得することができません。
欠格期間は、運転免許取消の原因となった行為が一般違反行為だった場合と特定違反行為だった場合で異なります。一般違反行為とはスピード違反や信号無視等の通常の違反で、特定違反行為とは酒酔い運転や危険運転致死傷等の重大な違反です。
当然、一般に反行為より特定違反行為の方が欠格期間は長くなります。
一般違反行為による免許取消の欠格期間
欠格期間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
---|---|---|---|---|---|
前歴なし | 15~24 | 25~34 | 35~39 | 40~44 | 45~ |
1回 | 10~19 | 20~29 | 30~34 | 35~39 | 40~ |
2回 | 5~14 | 15~24 | 25~29 | 30~34 | 35~ |
3回以上 | 4~9 | 10~19 | 20~24 | 25~29 | 30~ |
特定違反行為による免許取消の欠格期間
欠格期間 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
前歴なし | 35~39 | 40~44 | 45~49 | 50~54 | 55~59 | 60~64 | 65~69 | 70~ |
1回 |
– |
35~39 | 40~44 | 45~49 | 50~54 | 55~59 | 60~64 | 65~ |
2回 | – | – | 35~39 | 40~44 | 45~49 | 50~54 | 55~59 | 60~ |
3回以上 | – | – | – | 35~39 | 40~44 | 45~49 | 50~54 | 55~ |
特定違反行為とは、運転殺人や危険運転致死傷、酒酔い運転等の重大は違反行為のことです。
免許の再取得
運転免許を取り消された場合であっても、運転免許取得要件を満たしていれば再度取得して運転することが可能です。ただし、一度免許の取消を受けた人が再取得するには、取消処分者講習を修了しなければなりません。
そのため、運転免許の再取得には次の手順を踏む必要があります。
- 仮免許を取得する
- 取消処分者講習を修了する
- 講習から1年以内に本免許を取得する
取消処分者講習を受けるには、仮免許を受けている必要があります。これは、講習に道路上での実技があるためです。そのため、上記の手順を踏む必要があるのです。
取消処分者講習の受講期間は2日間で13時間となっています。受講料は30,550円です。講習内容は講義、実技、指導があります。(2017年3月調べ)
受講修了証の有効期間は1年間となっています。1年以内に免許を取得できなかった場合は再度取消処分者講習を受講しなければなりません。
なお、欠格期間は本免許のみに適用されますので、仮免許取得と講習受講は欠格期間中でも可能です。少しでも早く再取得したいのであればタイミングを考えて取得・受講を進めていきましょう。
再度免許を取得した場合は初心者マークが必要?
運転免許を再取得した場合、初心運転者としてグリーンの免許証が交付されますが、実際過去に運転していたのだから初心者マークの掲示義務はないようにも思えるかもしれません。
しかし、運転免許再取得の場合でも初心者マークの掲示が必要です。
運転免許再取得の場合は初心者マークを付けなくてもいいという規定は存在しません。そのため、再取得であろうと純粋な初心者と扱いが変わることもなく、掲示が必要ということになります。