信号のない交差点での過失割合を決定する大きなポイントは、直進車優先の原則と左方優先の原則の2つの原則です。この他道幅や優先関係、一時停止線の有無等が過失割合を左右します。これらの組み合わせが複雑なため、直進車と右折車の過失割合類型はバリエーションが多くなっています。
なお、以下の解説で優先原則の言葉を多用していますが、これはあくまでも事故があった場合の過失割合を考慮するための要素であって、現実に走行する際には譲りあいの精神を持つことが大切です。原則には例外があることを念頭において、柔軟で円滑な運転を心がけてください。
目次
1.直進車と右折車が対向関係
直進車:右折車=20:80
直進車と右折車が向かい合って交差点に進入する場合は、直進車優先の原則によって、右折車の過失割合が大きくなります。ただし、直進車も前方注視義務を怠っているので20%の過失割合を負担します。
なお、直進車より先に右折車が右折を開始していた場合は直進車の責任が重くなるため、右折車の過失割合が20%軽減されます。
2.右折車が左方、直進車が右方
直進車:右折車=40:60
道幅の差もなく優先関係も存在しない道路同士の交差点で、右折車が左方から交差点に進入したケースです。この場合は直進車優先の原則と左方優先の原則が競合します。直進車は直進車優先の原則で優先されるようにも思えますし、右折車の方が左方にいるのだから、左方優先の原則で右折車の優先するようにも思えます。
これらの原則の対立があるため、直進車優先の原則のみが機能するケース3と比べて、直進車の過失割合が10%加算されています。
3.右折車が右方、直進車が左方
直進車:右折車=30:70
ケース2とは逆で、優先関係が特に存在しない交差点で直進車がが左方にいるケースです。この場合、直進車優先原則と左方優先原則が共に直進車側に有利に働きますから、ケース2より直進車の過失割合が10%減算されています。
4.狭い道路の右折車と広い道路の直進車
直進車:右折車=20:80
明らかに道幅に違いがある道路同士の交差点では、広い道路の自動車の走行が優先されます。そのため、狭い道路から出てきた自動車が大きな責任を負うこととなっています。
なお、右折車が右折完了後に直進車が衝突した場合は、直進車の前方不注視の責任が大きくなり、15%過失割合が加算されます。
5.広い道路の右折車と狭い道路の直進車(右折車が左方)
直進車:右折車=60:40
ケース4とは逆で、右折車が広い道路から交差点に進入した場合です。右折車は直進車に注意して右折する必要があります。しかしこのケースでは直進車は狭い道路から交差点に進入していること、右折車の方が左方にいることから、直進車の方が過失割合が大きくなります。
6.広い道路の右折車と狭い道路の直進車(直進車が左方)
直進車:右折車=50:50
ケース5と直進車と右折車の右方左方関係が逆のケースです。この場合は直進車の方に左方優先の原則の適用がありますから、ケース5と比べて直進車の過失割合が10%軽減されます。
7.非優先道路の右折車と優先道路の直進車21
直進車:右折車=10:90
一方が優先道路である場合、非優先道路から交差点に進入する車は優先道路の走行車を妨害してはいけません。右折車が非優先道路から進入してくる場合は、右折車の責任が大きく、過失割合は90%となります。
道路の道幅の違いがある場合(ケース4)より、優先道路か非優先道路かの違いの方が、過失割合の差が大きくなっています。
8.優先道路の右折車と非優先道路の直進車
直進車:右折車=80:20
ケース7と右折車と直進車の関係が入れ替わったケースです。こちらでも非優先の直進車の方が大きな過失割合を負担することになりますが、右折よりも10%過失割合が少なくなっています。
9.右折車が停止線無視
直進車:右折車=15:85
停止線の引かれた交差点では、自動車は停止線の前で一旦停止する必要があります。一旦停止を怠って右折した場合には大きな責任が課せられます。
なお、このケースでは左方優先の原則は関係なく、直進車と右折車のどちらが左方にいたとしても過失割合は変わりません。これは左方優先の原則より、停止線の有無が優先されるためです。
10.直進車が停止線無視(右折車が左方)
直進車:右折車=70:30
ケース9とは逆で、停止を怠ったのが直進車のケースです。直進車が停止線を無視した場合は右折車が無視した場合と比べて過失割合は少なくなっています。右折は直進と比べてより高い注意が求められるためです。
なお、直進車が一時停止した上で交差点に進入した場合は、直進車の過失割合が15%減算されます。
11.直進車が停止線無視(直進車が右方)
直進車:右折車=60:40
ケース9では左方優先の原則は適用されませんが、停止線無視が直進車の場合は異なります。直進車が左方にいる場合は、右方にいる場合(ケース10)と比べて過失割合が10%軽減されます。