未成年者の交通事故とその責任

未成年者は法律的に様々な制約がありますが、他方で、責任能力については免責されることもあります。ここでは未成年者が交通事故における責任能力について、加害者になった場合と被害者になった場合に分けて解説します。

未成年者が加害者の場合

日本では四輪自動車の運転免許は18歳、二輪免許は16歳から取得することができます。そのため、未成年者が加害者となって交通事故を起こしてしまうという可能性があります。未成年者が事故を起こした場合、その責任は本人に追及することができるのでしょうか。

不法行為の責任能力

交通事故は不法行為であると考えられていますが、未成年者の不法行為について民法第712条は次のように定めています。

民法第712条(責任能力)

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

民法は、未成年であることだけを理由として免責を認めているわけではなく、自らの行為について責任が発生することを理解している必要があるとしています。これを事理弁識能力と言います。

事理弁識能力の有無が判断ポイント

自動車を運転している未成年者に事理弁識能力があったかどうか、が責任を負うかどうかの判断基準となります。

しかし、自動車学校では安全運転教育を受けており、試験に合格したからこそ運転免許を取得して運転しているわけですから、免許を取得している以上事理弁識能力がなかったということは難しいでしょう。

したがって、未成年者であっても交通事故を起こした場合は成人とまったく同じ責任を負うことになります。もっとも、これらの民事責任は自賠責保険や任意保険の賠償責任保険で補償を受けることが可能ですから、年齢に関わらず自動車に乗る場合は保険を掛ける必要があると言えます。

親の責任

もし仮に、未成年者が任意保険に加入せずに運転して、事故に遭ってしまった場合、被害者は親に責任を追及できないのでしょうか。未成年者に全責任がある以上、親に責任追及できる余地はないのでしょうか。

上で述べた責任能力のない未成年者については、親などの監督義務者が責任を負うとの規定が民法714条に存在します。これに対して、責任能力のある未成年者の親の責任については明文規定があります。

しかし、判例は、未成年者が加害者となった場合に、未成年者の監督義務違反を根拠として親に709条の責任を追及することも認めています。この考え方が可能なら、未成年者の責任能力の有無に関わらず、親に責任を追及できる可能性があります。実際に責任を認めた判例もあります。

⇒ 子が起こした交通事故の親の監督責任に関する判例

もっとも、未成年者に責任能力が存在する以上、親が事故の発生を容易に予測できた事情が存在することが要件となっており、なかなか認められないようです。

未成年者が被害者の場合

交通事故に遭った被害者が未成年者であった場合、責任関係にはどのような影響があるのでしょうか。

不法行為によって損害が発生した場合は、加害者に賠償責任が発生しますが、被害者側にも過失が認められる場合は過失相殺がなされます。つまり過失相殺の場合は、被害者の事理弁識能力の有無が問題となります。

例えば、小学校に登校中に遅刻しそうだからと道路に飛び出した小学生について考えてみます。一般に道路の安全な歩行についての事理弁識能力が備わるのは7歳程度だと言われています。そのため、飛び出した小学生が5年生であれば、過失相殺がなされますが、1年生であれば過失相殺がなされない可能性があります。

以上のように、不法行為における民事責任については、未成年かどうかという単純な判断がなされるわけではなく、個別的な状況に応じて事理弁識能力が備わっているかどうかで判断することとなっています。

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