治療費等が損害と認められる範囲

人身傷害事故では、治療費をはじめ様々な費用が損害として認められますが、それは事故と治療に相当な因果関係が存在する場合に限られます。

相当因果関係のない治療は損害として認められません。損害として認められないと、自動車保険の保険金の対象にもなりませんので注意する必要があります。

自由診療と保険診療の治療費

診療には健康保険を使った3割負担の保険診療と、健康保険のきかない全額自己負担の自由診療があります。交通事故では健康保険を使えないと思っている人も多いですが、そんなことはありません。病院によっては健康保険を使えないというところもありますが、国は明確にこれを認めています。この問題について詳しくは下記関連記事を参照してください。

関連記事:交通事故で健康保険は使えない?

本来、被害者に生じた損害は治療費も含めて全額加害者が負担すべきものですから、自由診療でも保険診療でも違いはありません。しかし、なるべく健康保険は使った方が有利な場合があります。

過失相殺される場合

1つ目は、過失相殺がなされる場合です。例えば、治療費以外の損害額が100万円で、治療費は自由診療なら100万円、保険診療なら50万円、過失割合が50%のケースを考えてみます。

まず自由診療の場合、100万円(治療費以外)+100万円(治療費)=200万円(総損害額)となり、過失相殺されますから、加害者から受け取れる金額は半額の100万円となります。そして、治療費も100万円ですから、被害者の手元には1円も残りません

保険診療の場合には、100万円(治療費以外)+50万円(治療費)=150万円(総損害額)となり、過失相殺により半額の75万円が受け取れます。しかし、治療費は50万円ですから、手元に25万円が残ります

このように、過失相殺される場合は健康保険を使った方が手元に残る金額が多くなります。治療費に限った話ではなく、過失相殺がなされる場合は実費を安く抑えた方が自己負担額は少なくなるのです

加害者から満足な賠償を受けられない場合

損害額が確定していても、全額の補償が受けられるとは限りません。例えば、加害者が無保険で支払い能力がない場合は自分で治療費を支払うしかありません。この場合は治療費は自己負担になりますから、当然健康保険を使って負担額を軽減した方がいいでしょう。

過剰診療による治療費

治療費は原則として全額損害として認められています。しかし、治療の必要もないのに過剰に長期間診療を受けさせる病院もあります。このような場合、過剰と判断された治療費は損害として認められません

この点は保険会社と被害者の間で争いになることが多いですから注意してください。

医師以外による治療費

治療は医師以外にも整骨院やあんま、マッサージなどの医業類似行為と呼ばれるものもあります。交通事故での傷害について、これらの治療を受ける場合は原則として医師の指示が必要です。指示のない場合その治療費は損害として認められません。

ただし、医師の指示がない場合でも、症状が回復し、医師の治療回数も減少したことや、その治療の程度が一般的に許容できる程度の者であれば、例外的に損害として認められる場合もあります。

基本的に、整骨院やマッサージを受けたい場合は医師に相談するか、自費を覚悟で受けることになるでしょう。

入院・通院に関する費用

入院通院に関しては、入院費用や交通費がどこまで損害として認められるのかという問題があります。

個室費用・差額ベッド代

入院すると、入院する部屋によっては個室費用や差額ベッド代が発生する場合があります。この差額は損害として認められるでしょうか。

そもそも、費用が損害と認められるかどうかの基準は、その費用が必要であったかどうかで判断します。つまり、症状が重篤であるとか一般病室が空いていないといったやむを得ない事情がある場合は損害として認められますが、それ以外の場合は自己負担となります。

雑費

雑費とは、入院時にかかる諸費用のことで、日額1500円程度とされています。雑費に含まれるものとしては、日用雑貨品・通信費・文化費(テレビラジオ使用代、新聞代等)が含まれています。

入院日数分が支払われるのが原則ですが、後遺障害が残る場合は将来の雑費も損害として認められる場合があります。

交通費

通院するには交通費がかかりますが、この場合も相当と認められる費用のみが損害として認められます。そのため、原則として電車・バスなどの公共交通機関を利用した場合の金額が損害となります

足を骨折しており、タクシーでなければ通院が難しいという場合にはタクシー代が損害と認められる場合もあります。判例では、医師からタクシーを利用するよう指示があった場合や電車で立っているのが苦痛であった場合等に損害として認めています。

自家用車を利用した場合は、ガソリン代、高速道路等の有料道路代、駐車場代が損害となります。

その必要性がないのに遠方の病院に通院する場合は、損害と認められない場合があります。損害と認められるには傷害の部位や程度、その病院に通院することの必要性を説明する必要があります。例えば、専門医がその病院にしかいない場合や、救急搬送されて入院した病院に通院する必要がある場合が該当します。

付添看護に関する費用

付添費用については、入院付添費と通院付添費に分けて考えます。

入院付添費は近親者が付き添う場合は日額6000円程度となっています。被害者の症状が重い場合や、幼児・児童の場合等、付き添いの負担が大きくなる場合は1割~3割増額されます。職業付添人の付添は実費が損害として認められます。

通院付添費は近親者の付き添いの場合、青い本では3000円~4000円、赤い本では3300円、緑の本では6000円と幅があります。

付添は原則1人ですが、症状が重く複数人での付添が必要な場合は人数分の付添費が認められる場合があります。

付き添う近親者が有職の場合

被害者が子供で親が共働きの場合等は、親が仕事を休んで付き添う必要があります。このような場合には、勤務を休んだことによる減収分も損害に算定されます

判例では、親の付き添いが不可欠出会ったケースで、父親の前年の年収が466万円であったことを考慮して、日額1万円の損害を認めた者があります。

職業付添人による付添費用が、勤務を休んだことによる減収分を上回る場合は、職業付添人による付添費用が限度となる点には注意が必要です。ただし、親による付添が必要な状況も考えられ、そのような場合には例外的に減収分全額が損害として認められます。

自宅付添

自宅療養中でも介護が必要な場合は自宅付添費用が認められる場合があります。両足の機能障害があった被害者の付き添いについて日額3000円の付添費用を認めた判例があります。

また、症状固定により後遺障害が認定された場合は、将来の介護費用が損害と認められます。期間は原則として平均余命となり、日額は8000円~9000円となります。

付添人・見舞いの交通費

被害者が一人暮らしの場合等に適当な付添人が近くにいなければ、遠方の近親者が付き添う必要があります。このような場合には付添人の交通費も損害として認められる場合があります。

その基準は、被害者の症状の重さ、看護の必要性等が考慮されます。被害者が危篤の場合に家族4人全員の往復交通費・宿泊費を損害と認めた判例があります。

また、危篤状態の場合には付添人だけではなく見舞いの場合でも交通費が認められる場合があります。

通院以外の交通費

通院以外の交通費でも損害と認められる場合があります。本来であれば必要のなかった交通費を出費した場合がこれに当たります。

例えば、傷害を負ったことにより、従来の電車通勤が困難となりタクシーで通勤した場合の通勤費は損害となります。さらに、営業外回り等で電車を使っていた場合にもタクシー代が損害として認められた事例もあります。

なお、通勤はできているのですから、この場合休業損害はでません。

将来の治療費

傷害の内容によっては、将来的に治療・手術が必要となってくる場合があります。これは主に、子供が被害者で、成長してから治療を受けることが望ましい場合に見られるケースです。

典型的な例は歯列矯正です。子供が事故で歯などに傷害を負った場合、とりあえず現時点での歯列矯正をしますが、将来的な生え変わりや骨格の形成を待って、再度治療を行う必要があるケースがあります。

このような将来の治療費は医師の診断書がある場合に限って損害として認められます。なお、将来の費用ですので、年数に応じたライプニッツ係数が乗算されます。

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