慰謝料とは、本人や遺族が自己によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金です。精神的苦痛を金に置き換えることには納得できない人もいるでしょうが、現実問題として現代社会においては金以外での解決が困難なためこのような制度になっています。
慰謝料の金額はほとんどが相場通り
慰謝料の額は精神的苦痛を金に換算することは困難ですから、青い本等で相場が定められています。例えば、一家の支柱が死亡した場合の慰謝料は青い本だと2700万円~3100万円で、赤い本、緑の本だと2800万円となっています。大抵のケースではこれらの基準額とほぼ同額の慰謝料が認められます。
これは、事故で受けた精神的苦痛という個人の主観的な要素を、金銭額という客観的な基準で判断することが困難なためです。
しかし、下記のように慰謝料が増額されるケースも存在します。
加害者に重大な過失があれば増額
慰謝料が増額されるケースで多いのが、加害者の運転に重大な過失がある場合です。飲酒運転や無免許運転、ひき逃げ、極端なスピード違反、信号無視等の悪質な交通事故の被害者・遺族への慰謝料は増額されることがあります。
被害者感情を考えると、当然のことのようにも思えます。通常の過失による事故と比べて、加害者の危険に対する認識や不注意から来る怒りや無念さが大きいものとなるでしょう。そうであれば精神的苦痛の対価となる慰謝料も増額されることになります。
加害者の態度が悪い場合も増額
加害者の態度によって慰謝料が増額されるケースもあります。全面的に自分に事故の原因があるのに、全く反省の色を見せない悪質な加害者も残念ながら存在します。具体的には、虚偽の供述、証拠隠滅、被害者への責任転嫁、示談の拒否等の行為が慰謝料増額の原因となります。
こちらの場合も、被害者感情を逆なでするものですから、増額されます。
逸失利益の代用としての慰謝料
少し特殊なケースとして、逸失利益が認められない場合に、代わりに慰謝料を増額するということが実務的に行われています。
逸失利益が認められるには、ある程度形式的な要件が必要な場合が多くあります。その要件には該当しないけど実質的に賠償額を増額すべきだと判断されたら、慰謝料が増額される場合があります。
例えば、顔に傷跡が残ったのに後遺障害等級の認定に該当しない場合です。顔に傷跡が残った場合の後遺障害等級については、詳細に傷の程度や顔の面積に対する割合が規定されています。
そのため、面積が若干足りないため後遺障害として認定されない、つまり逸失利益が支払われないことがあります。しかし、実際に顔に怪我をして一生それで過ごしていかなければならないのですから、このような場合には慰謝料が増額されることがあります。