未成年者の運転による交通事故に巻き込まれたとしても、その被害者は、加害者が未成年者であるという理由だけで親に責任追及ができるわけではありません。運転免許を持って自己責任で運転している以上、原則として本人が責任を負うことになります。(そのため任意保険の付帯は非常に重要です。)
ただし、事故の態様によっては、親に監督責任を追及することが可能な場合があります。ここで紹介する判例は、例外的に親の監督責任を認めたものです。
東京地裁判決平成12年6月7日交民33巻3号946頁
事例
18歳のAは友人から借りたバイクで制限速度が時速40キロの道路を、時速100キロで走行していた。その際交差点の赤信号を横断していたBを避けきれずに衝突し、Bは負傷した。BはAに対して、治療費等の損害賠償を請求するとともに、Aと同居する母親Cに対して、Aの監督義務違反を理由とする損害賠償を併せて請求した。
判決
AとCには次のような事情が認められる。
- Aは事故以前から恐喝やバイク窃盗等で逮捕されていること
- 事故の前年にCからバイクを買い与えられていること
- Aが友人らと危険な運転を繰り返しており、Cがそのような友人と付き合うのをやめるように言っても聞かなかったため、次第に何も指導しなくなっていったこと
以上を踏まえて、CはAがこのような事故を起こすことが容易に予測できたのにそれを防止するための措置を怠ったとして、Cの監督責任を認めた。
事故が容易に予測できる場合は監督責任が肯定される
親に運行供用者責任は追及できないのか、と疑問に思う方もいるかもしれませんが、このケースではバイクは友人から借りたもので親の所有でもなく管理下にもありませんから、それは困難です。
先に述べたように、自動車等の運転は免許が必要ですから、運転者には責任能力があります。そのため直接親に責任追及(民法714条)することはできません。しかし、未成年者の不法行為(民法709条)について親としての監督責任を間接的に追及することが認められています。本ケースでもBはそのように主張しました。
このケースでは結果的にBの請求が肯定されましたが、それは判決にあるように、CにAが事故を起こすことを容易に想像できたためです。常識的な感覚から言ってもこのケ-スはCの責任を認めるべきだ、という人が多数派となるでしょう。
しかし、事故を予測できる事情が存在しないか、存在したとしてもそれが難しい場合には、親の監督責任は否定されることになります。