高速道路走行中の自動車からタイヤが脱輪し、後続車両がそのタイヤに衝突してしまうという事故がときどき発生します。
なぜこのような事故が発生するのでしょうか。また、事故の責任は誰にあるのでしょうか。
主な事故原因は素人のタイヤ交換
走行中にタイヤが脱輪してしまう主な原因は、タイヤのナットが緩んでいたという単純なものです。しかし、プロの整備士からしてみればタイヤの着脱は簡単な作業であり、そう失敗するものではありません。(もちろん絶対にありえないとは言い切れませんが。)
ところが、タイヤ交換を業者に頼むと整備料が発生しますから、その整備料を浮かせるために自分でタイヤを交換してしまうという人が少なくありません。脱輪事故を起こしている自動車の多くはこのような人達が自分で取り付けたタイヤなのです。
自分で取り付けたタイヤ脱輪の法的責任は?
自分が交換したタイヤが脱輪してしまった場合どのような責任が発生するのでしょうか。
脱輪してしまったタイヤは、トラックの荷台等から落下した「落下物」と同じ扱いとなる可能性があります。落下物は落とし主の責任です。具体的には道路法第43条違反、道路交通法第75条の10違反となります。
道路法 第43条
何人も道路に関し、左に掲げる行為をしてはならない。
一 みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。
二 みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること。道路交通法 第75条の10
自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。
また、脱輪したタイヤに後続車が衝突し、死傷者が発生した場合には、過失運転致死傷罪を問われる可能性もあります。
タイヤ交換はプロに任せよう
以上のように、素人が自力でタイヤ交換をするのは大変危険です。タイヤ交換は整備料を惜しまず素直にプロの業者に任せるようにしましょう。
おそらくこの記事をご覧の方の多くは任意保険に加入されていると思います。
よく考えてみてください。自動車保険を掛けているということは、万が一のリスク(交通事故)をヘッジするために分散してコスト(保険料)を掛けているということです。
もし、自動車保険に入っていながらタイヤ交換を自分でしているというのであれば、一方ではリスクを分散しているのに、もう一方ではコスト(整備料)を抑えるためにリスク(脱輪事故)を増やしてしまうという矛盾した行動を取っていることになります。
高速道路で落下物を避けるのは難しい
最後に脱輪タイヤ等の落下物を回避する方法についてですが、高速道路では自動車は急に止まれないため、後続車がタイヤを回避するというのはかなり困難です。(だからこそ、落下物は落とし主の責任が重いのです。)
少しでも、落下物に巻き込まれる事故を減らすためには、とにかく前方のできるだけ遠くを見て運転するしかありません。また、夜間走行時にはヘッドライトを必ずハイビームで点灯(対面通行箇所は除く)して走行しましょう。