損害賠償請求の根拠

損害賠償が発生する根拠は民法に規定された債務不履行責任と不法行為責任の2つがあります。また、人身傷害事故については自動車損害賠償補償法上の運行供用者責任を負います。

債務不履行責任

債務不履行とは一言で言えば契約違反です。契約を締結することで、契約者は何らかの債務を負いますが、その債務の履行に違反することが債務不履行です。そして、債務不履行によって損害が発生した場合はその損害を賠償しなければならないと定められています。民法415条

交通事故において債務不履行による損害賠償が発生するのは、タクシーやバスなどの運行中に事故が発生した場合です。普段あまり意識することはないですが、タクシーやバスの乗客と運行者との間では運送契約が締結されています。

その運送契約の中には、運行者は乗客を安全に目的地まで送り届ける義務を負います。そのため、事故で乗客が死傷した場合や乗客の持ち物を壊した場合は、その義務に反した債務不履行責任を問われます。

不法行為責任

もう一つの損害賠償責任の根拠は不法行為責任です。故意または過失によって不法行為を行い他人に損害を与えた場合には不法行為責任を負い、その損害を賠償しなければなりません。

不法行為責任が成立するには、故意または過失の存在が必要です。過失とは注意義務に反することです。交通事故においては、事故が起こった以上安全運転義務に反している可能性が高いため、大抵の場合何らかの過失が認められます。

しかし、例外的に避けようのなかった事故の場合には過失が認められず、不法行為責任を負いません。過失割合で言うゼロヒャク(0:100)の事故です。典型的なケースは信号停車中に追突される事故です。この場合追突された側は不法行為責任を負いません。

債務不履行との大きな違いは、被害者との契約関係が存在しないことです。交通事故においては被害者と加害者は赤の他人同士なのが普通ですから、交通事故で発生する損害賠償請求権はほとんどが不法行為によるものです

運行供用者責任

上記の責任とは別に、交通事故で人を死傷させた場合には運行供用者責任を負います。

金銭賠償の原則

交通事故に限ったことではありませんが、他人に損害を与えた場合の賠償は、全て金銭で行うこととなっています。これを金銭賠償の原則と言います。

実際に損害を受けたものを原状回復をする方がいいのですが、現代社会ではそれは被害者が行う方が効率がいいため、金銭賠償が原則となっています。

まとめ

  • 交通事故を起こしたら、原則として過失があったとみなされて不法行為責任を負います。
  • 加害者と被害者が運送契約関係にあれば債務不履行責任と不法行為責任の両方を負います。
  • 人身事故では運行供用者責任を負います。

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