物損事故で主に問題となるのは車両損害です。車両に対する損害賠償は全損の場合と一部破損の場合で考え方が異なります。
全損の場合
車両が全損した場合は、その車の時価が損害額となります。仮に修理が可能であったとしても、時価が限度となっています。これは修理してその車を使い続けるよりも新たに車を購入した方が経済的合理性があるからだと説明されます。スクラップ代、下取り代が発生した場合は時価額からその代金が減額されて支払われます。
時価とは、同一の車種、年式、同程度の使用状況、走行距離の自動車を購入するのに要する金額を言います。
被害者が車を買ったばかりで新車同然の場合であっても、新車購入時の価格が賠償されるわけではなく、やはり時価による算定となります。
そのため、法律的な問題はともかく被害者としては感情的に納得いかないことが多い問題で、示談がこじれる原因にもなります。このような問題をある程度軽減できるのが任意保険の対物超過修理費用特約です。
なお、特殊な裁判例として、購入後6日で全損事故に遭ったケースで購入価格全額から下取り価格を減額した額、つまり実質全額が賠償の対象となった事例があります。
一部破損の場合
車両の一部破損では修理代がメインの損害となりますが、修理のために要した関連費用や修理期間中の補填のための費用等も損害に含まれます。
評価損
自動車が破損して修理した場合、その破損が完全に修理されたとしても、時価は修理前より減額されます。この差額を評価損と言いますが、これも損害に含まれます。
評価損の金額としては修理費の10~30%とするのが相場です。
牽引費用等
車両が自走できない場合の修理工場までの牽引費用、引き上げ費用、修理時の保管料も損害に含まれます。
代車料
修理に時間がかかる場合は、代車費用が必要となってくる場合があります。この場合代車はどの程度のものであるかが問題となることがあります。裁判例では高級外車の代車料として、国産車の高級車を限度としたケース、1日あたり2万円の高額の代車を認めたケースがあり判断が分かれています。
休車損
事故の被害に遭った車が業務用車両であった場合、休車によって生じた損害を賠償する必要があります。損害額は1日あたりのその車の営業収入から燃費等の支出費用を減算した額となります。
遊休車両がある場合は損害は発生しませんが、遊休の考え方の違いからトラブルが発生することが多い損害です。