ここでは車対歩行者事故での過失割合の基本的な考え方を説明します。
目次
歩行者について
歩行者とは、事故の瞬間に歩行している人だけでなく、事故の時は立ち止まっている人も当然含まれます。また、バイクのエンジンを切って押して歩いている人も歩行者に含まれます。この場合エンジンを付けた時点で歩行者ではなくなります。
車について
車は4輪自動車だけでなくオートバイや軽車両(自転車等)も含まれます。自転車では通行場所が明確に定められていないのが現状であるため、事故の際ににはよく問題となります。
車と歩行者の関係
車と歩行者では、物理的には車の方が強い立場にあります。これは言い換えれば、法的な立場は車の方が弱いということです。車を運転する者は歩行者や他の車の安全を犠牲にして目的地まで楽に便利にたどり着くという利益を享受しています。
車の運転者には歩行者と比較して重い責任が課せられています。特に歩行者との関係で言えば、運転者には歩行者の安全に配慮する義務を負っています。そのため、車対歩行者の事故が遭った場合には、必然的に自動車側の過失割合が大きくなります。
過失割合の加算要素と減算要素
過失割合は事故の起こった状況によって、ある程度相場が決まっていますが、あくまでも相場であって、個別的な事情によって加減されることを覚えておいてください。
このような個別的な事情もある程度類型化されています。
歩行者の過失割合加算要素(車の減算要素)
夜間の事故
車には歩行者を発見して、安全に回避行動を取る義務があります。しかし、夜間であれば視認性が低くなり、歩行者の発見が困難となります。これに対して、歩行者からはヘッドライトを付けた自動車は発見が容易になります。
そのため、夜間での事故の場合、原則として歩行者側の過失割合を5%増加させるのが基本となっています。例外としては、繁華街のような昼間と同程度に明るい場所での事故があります。視認性が昼間と同程度であれば、歩行者の発見は容易であるためです。
なお、自転車の場合は灯火していても歩行者から気付きにくいため加算要素とはなりません。
幹線道路での事故
幹線道路とは、一般的に次のような道路を言います。
- 片側が2車線以上
- 歩道と車道が分かれている
- 車の交通量が多い
通行料が多く、道幅も広い道路では、歩行者も比較的大きな注意が要求されます。そのため、幹線道路で発生した事故については過失割合が加算されます。横断歩道での事故の場合は5%、横断歩道以外での事故は10%加算されます。横断歩道以外の場合は歩行者の注意義務がより大きくなるため、加算割合も大きくなっています。
歩行者が車の直前・直後を歩行した際の事故
車の直前や直後を歩行することは危険なため禁止されています。そのため、歩行者の過失割合が加算されることとなっています。
歩行者の過失割合減算要素(車の加算要素)
住宅街・商店街での事故
幹線道路の場合と逆のパターンです。住宅街は人の居住するためのエリアで、車の走行が主目的の道路ではありませんから、車は比較的重い注意義務を負うことになります。
また、商店街では人通りが多く、基本的に車の走行を想定していない歩行者が大半ですから、やはり重い注意義務を負うことになります。
そのため、歩行者の数や道路の状況等によって歩行者側の過失割合が減算されることとなっています。
幼児・児童・高齢者・身体障碍者との事故
車は、歩行者が交通ルールに従って歩行してくれることを信頼して運転することができます。これを信頼の原則と言います。しかし、歩行者の態様によってはそのような信頼が妥当しない場合もあります。
例えば、幼児・児童であれば、大人の歩行者であれば通常考えられない突然の飛び出しなどの危険があります。相手が子供であれば、車側はそれ相応の注意をすることが求められています。
高齢者や身体障碍者であれば、通常より行動が遅かったり、危険の回避行動ができなかったりすることが想定されます。これについても車は配慮する義務を負っています。
そのため、歩行者が幼児・児童・高齢者・身体障碍者の事故では、歩行者側の過失割合が減算されることとなっています。
集団通行中の歩行者との事故
学校の集団登下校は、比較的車から発見しやすく危険の回避が容易となっています。そのため、事故が遭った場合は歩行者側の過失割合が減算されます。
車側に著しい過失・重過失がある事故
酒気帯び運転、酒酔い運転、携帯電話での通話をしながらの運転等、運転者側の過失が大きい場合は、歩行者側の過失割合が10%~20%程度減算されます。