親に自分の車を使わせた場合の運行供用者責任

この判例は運行供用者の実質的な要件を運行支配・運行利益の帰属する者としたものです。

最高裁昭和43年9月24日判決判時539号40頁、判タ228号112頁

事案

Xがバイクを運転中、先行車が一時停止したため進路変更したところ、Xを追い越そうとしていた右側の軽自動車Yと接触した。Yの運転する車両は、Yの子Zの所有するもので、Yはそれを借り受けて自己の営業に使用していた。そこで、Xは車両所有者のZが運行供用者に当たるとして損害賠償を請求した。

判決内容

自賠法3条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは自動車の使用について支配権を有し、かつその使用により利益を享受する者を言うと判示した。その上で、YはZの父親であり、Yはその自動車を借りて自分の営業に使用していたのであるから、Zはその運行について直接の支配力を及ぼし得ない関係にあったとしてZの運行供用者性を否定しました。

判決のポイント

自賠法3条は「自己のために自動車を運行の用に供する者」が運行供用者の要件であると定めていますが、具体的にどのような者がそれに当たるのかという実質的要件が問題となっていました。この判決は、運行支配と運行利益の両方が帰属する者が運行供用者であると判断しました。

この事例において、Zは自動車の所有者であり、運行供用者であると認める余地もあるように思えますが、実際に車はほとんど親のYが常にY自身の事業用として使ってたのですから、支配する立場でもなければ、利益を受ける立場でもありません。そのため判決はZは運行供用者には該当しないと判断しました。

もっとも、最近では任意保険の付保率が上がってきているため、運行供用者責任が争点となることは減ってきています。また、この判例は昭和43年当時の判断であり、現代では自動車の所有者が運行供用者ではないとする判断は出されないとの指摘(学陽書房「要約交通事故判例140」p9)がなされています。

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