任意保険では加入者間の平等を図るため、いろいろなシステムを利用して保険料の金額を調整していますが、ノンフリート等級は運転者年齢条件と並んでその代表的な例です。
軽い事故の場合に保険を使うか自費で処理するかを考える上で重要なポイントですので、基本的な概要は理解しておいてください。
なぜ等級制度があるのか
そもそも、なぜ任意保険では等級ダウン制度というゲームのような制度が導入されているのでしょうか。世の中には様々な保険がありますが、等級制度があるのは自動車保険の任意保険だけです。
本来保険は、個別にリスクを評価して保険料を決定するものです。しかし、現在の任意保険制度では、リスク評価は基本的に等級のみによって判断され、運転者の個別的な技術を保険会社が査定するわけではありません。
これは、膨大な数にのぼるため任意保険の査定を簡略化したためです。現在の高度な車社会では、常に大量の新車が送り出され、10年程度で廃車となります。また、交通事故の件数も極めて多く、死亡事故だけでも毎年3000件以上発生している状況です。このような極めて流動的な状況の下で、一人一人の被保険者の運転技術をチェックするのは合理的ではありません。
そこで、等級制度によって一律に評価し査定を簡略化しているのです。
ノンフリート等級制度の概要
1~20等級の20段階が設定されています。数字が大きいほど等級は上で、保険料の割引率が高くなっていきます。初めて自動車保険に加入する人は原則として6等級からスタートします。
等級のアップダウン
等級は1年間の事故歴(保険使用歴)によって次年度の等級が決まります。事故がなければ次年度1等級アップします。
逆に事故があれば次年度は3等級ダウンします。事故の内容によっては、1等級ダウンとなる事故やノーカウントとなる事故もあります。
保険会社が変わっても等級は引き継がれる
一括見積もり等を利用して保険会社を乗り換える場合でも、前の保険会社の等級を新しい保険会社に引き継ぐことができます。また、自動車を買い替えた場合でも、等級は引き継がれます。
逆に、等級ダウンしたからと言って保険会社を乗り換えても、乗り換え先でもダウンした等級が適用されてしまいます。
事故有係数と無事故係数
事故有係数は2012年10月1日から開始された制度です。
事故有係数の導入により、同じ等級でも保険を使ってダウンした等級と、保険を使わずアップした等級では保険料の割引率が異なるようにルールが変更されました。
保険を使った場合の割引率を事故有係数、使わなかった場合の割引率を事故無係数と言います。
事故有係数は事故内容によって次の適用期間が決められています。
事故有係数の適用期間
3等級ダウン事故:3年間
1等級ダウン事故:1年間
例えば、17等級の人が事故を起こして保険を使うと通常3等級ダウンし、次年度は14等級となりますが、この場合の割引率は事故有係数の-31%となります。
事故有係数の適用は3年間続きますから、その次年度は事故有15等級(-33%)、さらにその次年度は事故有16等級(-36%)となり、ようやくその次の年度で事故無係数の17等級に戻ります。
このように、保険を使ってしまうと今後の保険料が等級ダウン分だけでなく、一定期間さらに増額されてしまうようになってしまいました。保険を使うかどうかの判断は従来以上にシビアなものとなってしまったと言えるでしょう。