道路外致死傷とは、公の道路以外で発生した人身事故のことです。道路上での事故(交通事故)ではないので道路交通法上の罰則は適用されませんが、被害者に対する不法行為責任や刑事上の責任を負うことがあります。
私有地内での事故は道路交通法の適用外
道路外致死傷は、道路交通法では「道路以外の場所において自動車等をその本来の用い方に従つて用いることにより人を死傷させる行為」と定義されています。
道路外でも自動車を運転することは案外少なくありません。一番身近なところでは駐車場があります。大規模な施設の駐車場では、公道と同じような道路が整備されているところもあります。
また、あまり一般にはあまり馴染みがないかもしれませんが、大規模な工場では道路が整備されているのが普通です。この他ゴルフ場等の広い私有地内に整備された道路もこれに該当します。
道路交通法が適用されるのは公道に限られており、私道上での行為には適用されません。例えば、サーキットに持ち込んだ自動車を高速で走らせてもスピード違反にならないことは感覚的にもわかるでしょう。
刑事責任、民事責任は負う
道路交通法上の責任は負いませんから、酒気帯び運転等の違反行為で反則金・罰金や点数の加算がされることはありません。しかし、(当たり前のことですが)工場内での走行は、普通の道路より危険ですから、工場の管理責任者によって速度制限や徐行義務が設けられるなど、厳しい制限が課されています。
また、次の通り道路外致死傷行為を起こした運転者は次のような責任又はリスクを負うことになります。
道路外致死傷の被害者に対して、不法行為等の民事的な賠償責任が発生します。民事責任は加害者と被害者の個人的な関係が問題となりますから、公道で起こった事故であろうと私有地内で起こった事故であろうと全く同じ責任を負うことになります。
刑事的責任も公道での事故と同じ責任となります。死傷について過失が認められるのであれば過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。当然、飲酒運転をしていたのであればより重い罪を科されることになります。
行政上の責任を負う可能性もあり
道路交通法上の影響も全くないわけではありません。道路外致死傷を起こした場合は運転免許を取り消される場合があります。具体的には次の場合です。
- 故意に人を轢いたとき
- 危険運転致死傷罪が適用されたとき
- 飲酒運転中に事故を起こし、その発覚を免脱しようとしたとき