運転免許に対する処分には、ここで紹介する免許停止(免停)と免許取消の2つがあります。ここでは免許停止になってしまう条件や、免許停止期間を短縮するための停止処分者講習(いわゆる免停講習)について解説します。
なお、免許取消については運転免許の取消(免取)となる条件と欠格期間で解説していますのでご確認ください。
免許停止の条件
運転免許が停止される条件については、道路交通法第103条で次の通り定められています。
- 精神病、意識障害・運動障害をもたらす病気に罹患している場合
- 認知症である場合
- 目が見えない等の運転に必要な身体機能に障害がある場合
- アルコール、麻薬、覚醒剤等の中毒者である場合
- 道路交通法等の規定に違反した場合
- 重大違反唆し等をした場合
- 道路外致死傷をした場合
- その他著しい交通の危険を生じさせる恐れがある場合
一般的には免許の点数の累積によって停止されると考えられていますが、それ以外にも様々な理由で停止される可能性があります。免許停止は公安委員会の裁量によってなされる処分です。
累積点数による免許停止
免許の点数で免停となる場合は、前歴の有無や回数によって、停止となる点数や停止期間等の条件が異なります。免停の日数は30日単位で、最短が30日、最長で180日と定められています。
これまで全く違反がなかった前歴なしの人でも6点以上の違反をすると一発免停です。例えば、高速道路では時速40㎞以上のスピードオーバーは6点です。70㎞区間で110㎞以上で走行する自動車は珍しくもありませんが、もしこれで捕まるとみんな一発免停となってしまいます。
このように、免停は処分を受けた人はあまり自分には関係ないことのように感じられるでしょうが、少し油断するとあっさり免停となってしまいます。
前歴は1年で消滅
前歴とは、過去に免許停止になった回数のことです。ただし、最後の免停期間の終了日から1年経過すると前歴のカウントが1減ります。例えば、過去に3回の免停処分を受けている人が最後の処分の終了日から1年を過ぎると前歴は3回から2回に減少します。さらに1年経過するとまた減少して1回となります。
そう何度も免停になることはないと思う人もいるかもしれませんが、2回目以降はかなりあっさり免停となってしまいます。特に前歴2回目以降は2点で免停ですから、簡単に連鎖して悪循環に陥ります。1回免停となったら、前歴が消えるまでの1年間が踏ん張りどころです。絶対に違反をしてなるものか、という強い意志で運転することをおすすめします。
停止処分者講習
免停となった場合でも停止処分者講習を受講することで、停止期間を短縮できる場合があります。講習には短期、中期、長期の3種類の講習があり、免停日数によって受ける講習が決まります。
いずれも講習の終了後のテストが実施され、その得点数によって短縮される期間が決まります。テストは優、良、可、不可の4段階です。もっとも、テストはとても簡単なので、大抵は優を取れます。
- 優 正答率85%以上
- 良 正答率70%以上
- 可 正答率50%以上
- 不可 正答率50%未満
なお、講習は任意ですので、受講せずに本来の停止期間の経過を待つという選択も可能です。もっとも、絶対に受けた方が得ですので、ほとんどの人が受講します。
短期講習
短期講習は30日の免停処分を受けた人のみが受講できる講習です。講習は1日で終了し、受講後のテストの結果によっては翌日から運転することが可能となります。
また、その場合は免停処分そのものが免除され、6点の点数もなかったことになります。ただし、次回更新時の免許証はブルーとなります。
中期講習
中期講習は60日の免停処分を受けた人を対象とする講習です。講習期間は2日間で10時間となっています。講習後のテストの結果によって、最大で30日の短縮が可能です。
長期講習
長期講習は90日以上の免停処分を受けた人を対象としています。講習時間は2日間で12時間となっています。テストの結果による短縮日数は次の通りです。
- 90日免停 → 最大45日に短縮
- 120日免停 → 最大60日に短縮
- 150日免停 → 最大80日に短縮
- 180日免停 → 最大100日に短縮
もし免停中に運転したら・・・
免停中は、文字通り免許の効力が停止している状態ですから、運転すると無免許運転と同じ扱いとなります。もし免停中の運転で捕まると、無免許運転は19点の加算となりますから、前歴なしでも確実に免許取り消しとなります。
また、免取の前歴なしの場合、15点~24点で1年の欠格期間となりますから、少なくとも向こう1年間は運転できなくなります。
刑事処分も1年以下の懲役又は30万円以下の罰金とかなり重いものです。
免停中に万が一事故を起こしてしまうと、更に大きな責任を負うとともに、任意保険の保険金支払いを受けられない可能性もあります。
全く運転経験のない無免許運転とは違うので、なんとなく軽い気持ちで考えてしまいそうにもなるかもしれません。しかし、現実にはこのようにかなり重い処分を受けますので、くれぐれも免停中は運転しないよう、十分気を付けてください。